郷倉和子の現況 第11回
 
 5月には小下図(秋の院展出品画)に基づく本画での試作をしていました。 今回は自宅
の屋根と富士山それに梅花を添えたものですが時間と空間の隔たりを作品の中で同化で
きず考えこむことしばしばの様子。それでも試作は5月一杯で目鼻を付け6月から屏風
制作に取り組んでいました。「本来なら2曲屏風にそれぞれ描くのが順当だけどあえて六
曲半双に総てを描き込みたい」(和子証言) 屏風制作は苦難の連続。梅雨が長く続き猛
暑が少なく気候には助けられたようです。制作を終えた和子は「想像的な作品をもっと
自然に描けなければいけないのだけど」の言葉が印象的でした。
 

第94回院展「遊想山岳」
 
 春からは11月に開催される日本橋三越での個展の準備に取りかかっていました。
「院展の出品画を含めても良い」とのお話でしたのでお引き受けいたしました。また幸
いにも手持ちに新作で寸松庵というサイズの紅梅、白梅が10点がありましたので気持
にゆとりを持って残りの小品を描けました。質的にもう一段階上昇できぬものかと対象
物になりきるのではなく対話しているような気持ちで描いてみました。(和子証言)
初日には久しぶりに色々な方とお目にかかり楽しかったようです。普段はあまり人の前
に出ぬ和子は人酔いで疲れてしまったようです。(新作約20点)
 

「紅梅」寸松庵

「白梅」寸松庵
   
   
   

会場風景

会場風景
 
 
 

チューリップ 6号

芙 蓉 6号
 
 
 

爽 春 10号
 
個展を終えた和子は庭を散策しながら 「秋はおわってしまったのかね」「変な年だね」 
「今年は春夏秋冬があまり感じられないね」(和子)
 12月には新型インフルエンザの予防として既成のワクチンと肺炎ワクチンを摂取、12月も僅
かになった頃から急に大寒波が押し寄せ和子は画室にて来年、春の院展出品画の試作に
余念がありません。
2010年の元旦から3日間、晴天。
和子は孫や曾孫に囲まれて幸せそうでした。
 
 
第11回 2010年1月5日発行
 
 
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