郷倉和子の現況 第14回
 
 昨年の末より手がけている春の院展出品作は例年と同じく「花の精」のシリーズ。
木喰上人が制作した如来像に白梅を添えた作品。頭で考えた創造の世界が展開されて
いるようだ。
 

第66回春の院展「花の精(四)」
 
 この作品を描いている最中に東日本大震災に襲われ、東京も震度5強という揺れに遭
遇しました。画室から和子が大声で「大変だ」と叫び家の者が駆けつけました。棚から
本が落ち大事にしていた花瓶が割れてしまいました。すぐにテレビをつけると画像から
は信じられない光景が次から次へ、唖然として見いってしまいました。
これは一体何事か・・・。
余震は東京でも頻繁に起き和子はすっかり、描く気力を喪失してしまったようです。何
も出来ないうちに一ヶ月が過ぎてしまったようで、脱力感からの解放は、秋の院展制作
が近づいた5月下旬。「このようなショックをうけると高齢者は何もしたくないものね。
やらなければならない仕事がある事は救いよね。(和子証言)」
 
 
秋の院展制作には飼っている兎と梅樹を描きました。生きる喜び。生きる苦しみ。その
現実。そんな思いで作品を仕上げたようです。
 

第九十六回院展「薫春躍兎」
 
スポーツ好きな和子は「なでしこジャパン」のサッカーをテレビ観戦。優勝に大満足し
ていた姿が印象的でした。
東京の暑さは9月の下旬まで続き日々秋めいてゆく季節になり始めています。
 
 
 
 
 
第14回 2011年9月26日発行
 
 
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