郷倉和子の現況 第15回 |
秋から冬にかけて報道の大半は暗い東日本大震災と原発災害の話題が中心となり日本 |
人なら誰でも将来を不安に感じていたのではないでしょうか。和子もテレビを見る度に |
「しかたないね」の連発をしていましたが関東大震災や敗戦を経験した人らしい潔(イサ |
ギ)よさを表情から垣間見るみることができました。 |
この時期、仕事では旭日富岳の図に白梅や富士に紅梅で構成された作品を描いています。 |
大正生まれの日本人としては当然の気持ちなのかもしれません。 |
「昇 陽」6号 |
2012年の新年も幕開けしました。今年はどんな年になるのでしょうか。今年の寒 |
中はかなりの厳寒のせいか例年1月には咲くはずの早咲き白梅の蕾も堅く3月の上旬に |
白梅が開花。何時もは早咲きから遅咲きまで約3ヶ月間、梅の花を楽しめますが今年は |
1ヶ月ほどしか見ることが出来ませんでした。梅が散ったら瞬く間に桜が咲くという慌 |
ただしい季節の激変、 「これでは身体もついて行けない」と和子は不機嫌な日が多かっ |
たように思います。 |
第六十七回春の院展「花の精(五)」 |
春の院展出品画には「花の精」のシリーズを描きました。描かれている上部の枝振り |
は昨年の夏、突然枯れてしまった青軸白梅への鎮魂の思いを、枝振りの一部と一輪の梅 |
花を小宇宙に見立て、木喰上人作、如来像のイメージと組み合わせ「花の精X」を |
出品しました。仏様を描く数年前から取材のため幾度となく宮崎県西都市を訪ねていた |
和子。梅と如来様を組み合わせた作品は何を表現したかったのだろう。おそらく如来様 |
でも梅でもなかったようである。神仏は崇拝すべきものだが現に生きている命(梅)と |
仏様は同等なのではないか。こだわりの面白さとこだわらない尊さをシリーズを通して |
表現したかったようだ。 |
牡丹の咲く5月上旬は春の嵐に見舞われ、牡丹の花が雨風 に遭遇するので切り花にし |
て楽しんでいましたが数日で型がくずれ、だらしない花になってしまいました。 |
「人がいいと思う環境と花にいい環境は違うのかもしれないね・・・」と和子はつぶ |
やいていました。 |
第15回 2012年5月20日発行 |