郷倉和子の現況 第16回
 
 「春の院展」の出品画を描き終えた和子は休む閑なく秋の出品画目指して準備にはい
りました。過去二年間、改築工事で使用出来なかった東京都美術館での展覧会。皆さん
大作をお出しになるだろう。私は高齢者なので年相応の2曲半双の小さな作品を描きま
した。
充分構図を練り、時間を掛けて考え考え描いたつもりです。「皆さんの目にはどのよう
に映ったのでしょうか。渾身の力で描くのですが出来上がるといつも満足出来ません。
困った事だと思っています。」「和子証言」
『春の瞬き』は 幼少の頃、ぼやっとした春の昔の記憶に一匹の野ウサギがどことなく現
れてどことなく去っていくそんな光景を3匹の兎を描くことで表現したようです。
 大正生まれの和子にとってこんな光景は当時は日常茶飯。今は非日常の光景。今でも
こんな光景がどこかにきっとあるはず。時代は進み環境が一変する中、「変わらぬもの
の愛らしさを描きたかったのです。」「和子証言」
 

第九十七回院展「春の瞬き」
 
 今年の8月中旬は大変蒸し暑く和子は大変疲れた様子でした。やたらに水を飲み何を
食べても美味しくないという。家族の者は熱中症かと思っていたら急に発熱。知り合い
の医師に来て頂いたら肺炎とのこと。2週間程で落ち着いたが、窶れた顔を見せたく無
いと人に会わず、25年度「春の院展」の出品画の準備にとりかかった。
 12月は例年になく寒中のような寒さ。「病後で古い日本家屋では寒くてかなわない」
と部屋に2台の暖房機器と空気を撹拌するファンを置き、湿度対策に加湿器も用意しま
した。
 「今年で私は白寿! こんなに長生きするとは思わなかった。」「和子証言」
 
 
第16回 2013年1月10日発行
 
 
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