郷倉和子の現況 第5回
 今年の東京は、秋らしい爽やかな日が少なく、12月になると急に寒くなり冬になっ
てしまいました。
 昨年までは、早咲きの梅は12月の下旬にはつぼみもふくらみ、陽のあたる所では咲
き始めましたが、今年は全くその気配も感じられず、関東特有の空っ風が吹き、手足がし
びれるような寒さが続きました。
 和子は、例年12月に咲きかけの梅の枝をスケッチしますが、厳しい寒さの為、一枚
もスケッチをしないで新年を迎えることになりました。
 2月になっても、ふくらみかけたつぼみは、ちっとも開かないように見えました。仕
方なく、和子は富士山の取材に出かけました。白銀の富士山をイメージして行ったのです
が富士山も異変 !! 頂上に雪はなく、中腹のみに雪がある富士山「こんな富士山はみたことがない」と言い帰宅してしまいました。
 
 2月中旬から下旬にかけて梅が咲き始めましたが、2、3日で満開。「今年は何も取
材出来なかった」とこぼす事しきり。貸して頂いたルーシー・リーの壺に
梅の枝を組み合わせて取材しましたが、梅の枝と壺の相性がどうしても
あわず断念。ミスマッチの美に挑戦してみたかったのだが残念。
春の院展には、以前取材した水戸「偕楽園」の梅の取材を基に50号の作品を制作しま
した。

第61回春の院展「好望」
2月中旬に富山県射水市の記念式典にご招待頂きましたが、風邪気味のため出席でき
ず、とても残念に思っていましたところ、射水市役所からお電話がありまして、分家射水
市長が遠路お出かけくださいますとお知らせくださいました。お目にかかれて本当にうれ
しゅうございました。」(和子証言)

 
(北日本新聞紙面より)
 文化功労者で日本画家の郷倉和子さん(91)が七日、射水市に作品を寄贈した。分
家射水市長が同日、東京・世田谷区の郷倉宅を訪れ、寄付目録を取り交わした。
 郷倉さんは旧小杉町出身の日本画家、故千靭氏の長女で、平成14年の文化功労者顕
彰に伴い、同町の名誉町民に推挙された。射水市の誕生で同市の名誉市民となったことか
ら、市に作品の寄付を申し出た。
 寄贈したのは、第八十二回院展に出品した屏風四曲半双の「うららか」。自宅の庭に
植えられた紅梅を繊細に描き、春の訪れを表現した。郷倉さんは「わが家に咲いた梅の絵
が、親の古里である富山に残ることになり、うれしい」と笑顔で語った。
 市長は「古里のためにありがとうございます」とお礼を述べ、「市民をはじめ多くの
人に見てもらえるようにします」と約束した。作品は今月中旬、市に運ばれる予定で、
早ければ四月にも旧小杉町の町民展示館か新湊博物館に展示される。

第82回院展「うららか」
第5回 2006年3月24日発行

 

 
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