郷倉和子の現況 第6回
 
 春の陽気の良い日に井の頭公園のおしどりをスケッチに出かけました。以前からおしど
りには興味がありスケッチはしてあったので、それを基に注意深くおしどりを観察しまし
た。特に水の波紋が面白く、じっと見つめていると不規則な中に規則があるのに気がつき
ました。おしどりの足や水掻きの動きが、おしどりの周りの波紋を作りだし、風によるさ
ざ波と一体になります。水の動きの美しさに見とれてしまいました。それから数回にわた
り井の頭公園を訪れました。
第91回院展の出品画はこのおしどりをテーマに描きました。
 

水辺の春光
 
 水辺に張り出している梅樹は、横浜の三渓園でスケッチし、水辺とおしどりは井の頭公
園でスケッチしたものの合体です。おしどりと白梅の組み合わせもなかなか趣があり、こ
れからも機会があれば描きたいと思っています。(和子証言)
 
 昨年の秋に、あるギャラリーのご依頼で今年の東美特別展に描いてほしいとの注文で、
2号〜15号まで10点、梅をテーマにさまざまなモチーフでの制作に着手しています。
 
 12月中旬、寒さ厳しい折り、富士山の取材に2度出かけました。家人に風邪でもひい
たら大変。と言われましたが、町中に出てノロウイルスにかかるよりも車の中から
の取材の方が人がいないから安全と思い出かけてしまいました。12月一杯、富士山の研
究に専念しました。
 

2007年元旦 梅と語らう
 
 2007年のお正月元旦は穏やかな一日でした。和子は大好きなおせちを食べてから、
散歩かたがた、庭の梅樹の1本1本を丹念に見て回り、もうすぐ咲く梅花のつぼみに愛し
そうに話しかけているようでした。和子にとって梅の存在とは女性の象徴のようです。
若い頃から女性しか描けぬ作品があるはずと口癖のように言っていたことを思い出す。
 
 

旭日富岳
 
 2日には、色紙に新年試筆の旭日富岳を描いていました。「富士山の形はととのってき
たけれど、もうすこし何かをくずしたいね!」と言いながら。「和子証言」
 
 
第6回 2007年1月10日発行
 

 

 
Back