郷倉和子の現況 第7回
 
今年の梅花はなかなか咲かず、咲き始めたら一挙に満開になってしまった。 「3部か4
部咲きがいちばんきれいなのに・・・」とぶつぶつ言いながら庭を散歩。毎年楽しみにして
いるだけに残念そうだった。
 
梅樹が仏様に、見えてきたのだろうか!画室では、春の院展出品画、菩薩像と梅花の構図作りに余年がない。構想 は以前から暖めてきたものだが、仏像を描くのは、はじめてのこと。父・千靱が集めた仏画の本は色々あるが、「外国人の顔をした仏像は描きたくない・・・ やはり日本人の顔をしたざっくりした木彫の仏像がいいわね!!」と言い、頭をひね
りながら描いている和子の姿が印象的でした.春の院展会場で自分の作品の前で、和子は「来年の春の院展も仏像を描かせて頂こう・・」とひそかにつぶやいていました。
 
 
 

「献 花」
 
春は次から次へと、いろいろな花が咲くのに、今年は同時に花が咲き、あっという間に初夏になりました。「庭木がうっそうとしているからいつもより早めだけど植木屋さんに入ってもらいましょう。今年は気候がおかしいね」といっていました。
 
 
6月には院展の出品制作の準備に入り、「湖面とおしどりの作品を描きたい」とのこと
で、井の頭公園に取材。何度行っても曇りのせいか、おしどりは姿を見せてはくれません
でした。橋の上から湖面を見ながら和子は何を心に描いていたのだろう?おしどりの姿が
なくても毎回、小一時間は湖面を見つめていました。
制作された作品は今までとは少し異なったものになっているように思えます。
梅の枝と水、おしどり、すべてを動的に捕らえた作品のようです。すべてが一瞬を共有していることを表現したかったのかもしれません。取材に出かけても何一つ収穫出来ぬことも考えようによっては、創造力をかき立てることにも役立つと考えていたようです。
 
 

「水辺の春光 二」
 
9月には、富山大和百貨店新装オープンの展覧会として郷倉千靱・和子展 が開催されま
す。その第一回目の展覧会に選んで頂きましたこと感謝しております。
大和百貨店の益々のご発展をお祈り申し上げます。
千靱の旧作の小品と和子の小品約40点が展覧されます。
 

郷倉千靱作「柏木にフクロウ親子」

郷倉和子作「紅白梅と花瓶」
 
 
第7回 2007年9月5日発行
 
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