郷倉和子の現況 第9回
 
 新緑の頃、青葉若葉の中を飛び回る雀たちを良く眺めていました。「飛び回 る雀は描
けないから、しっかり目に焼き付けておかなければ。」といいながらスケッチ帳にいろい
ろな格好をしている雀を試作していました。動いている雀を梅の枝に配することで少しは
風が感じられる作品に仕上がったようです。
この作品は高島屋の「高峰会」に出品されました。
 

「春日こもれび」30号
 
 新緑も過ぎ秋の院展制作の準備に専念。小下図を描きながら「ああでもな い・こうで
もない」とかなりの試行錯誤が続く。描こうとしているのは昨年と同じ鴛鴦と梅のある風
景は3年連続同じテーマである。思案の末に決まった今年の構図は一見なんの変哲もない
当たり前に見える景色だが「これがなかなか難しい」和子証言。本人にとっては、かなり気にいっているようでした。
 

小下図

小下図
 
 和子は6月上旬から本画の制作に入りました。今年の梅雨は空梅雨で比 較的過ごしや
すかったせいか、かなり精力的に仕事が進んだようですが、温暖化の為か、夏の猛暑に
はすこしバテ気味で、作品が出来上がったのは8月下旬。かなり時間と労力を費やした
作品でした。
「今までにも同じテーマで出品画を描くケースもありましたがどちらかと言えば書き直し
てみたいという思いが強かったように思うけれど、(水辺の春光)シリーズは出来不出来
は別として三作とも、それなりの狙いは出来たように思います。私流の真・行・草のよう
なものでしょう。」と和子は微笑んだ。
 

「水辺の春光三」
 
 制作後1週間ぐらい静養方々好きな古美術等を鑑賞。「来年はなにを描こうか」作家として今が一番楽しい時といわんばかりである。
 
 10月、遅咲きの芙蓉を見つけスケッチしながら「これから日々紅葉が楽しみね。富
士山にも雪がきたと言うから天気の良い時に出かけたい。」とのことです。
 
   
芙蓉の写生
 
 
第9回 2008年10月30日発行
 
 
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